獅子の皮を被った子猫の逃走劇



 「理香子さん!持ってきたよー」
 「あ獅音ちゃん、ありがとね〜!これがないと今日何も出来ないのよ〜」


 病院につき叔母に、頼まれていたものを渡した。


 「あら、獅音ちゃん暗い顔してどうしたの?」
 「え、そんな顔してる?」


 叔母に言われて、急ぎ手鏡で確認してみるけど、自分じゃよく分からなかった。

 なんだろって思ったけど、心当たりと言えば、先程の出来事しか思いつかなくて。


 「……さっきね、男の先輩なんだけど、綺麗な女の人と歩いてるの見て、それからなんかモヤモヤしてるんだよね」
 「あらあら、ふふっ!お姉ちゃんに報告しなきゃ」
 「え、お母さんに!?なんで!?」


 にやにやした顔でスマホをいじりだす叔母。

 お母さんに何で報告するんだろ。

 止めようとしたものの、こうなった叔母は止められない。

 こうゆうとこはお母さんそっくりだから、遺伝なのだろうか。

 帰り際にもしきりに、若いっていいねえ、と言う叔母に疑問符を飛ばしながら病院を出た。


 雨はまだ、止みそうになかった。


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