獅子の皮を被った子猫の逃走劇
脳裏にいるのは、綺麗な女の人と腕を組みながら歩く先輩。
思い出したくないのに、記憶の中のそれはいやにリアルで。
少し手が触れ合っただけでこんなに反応してしまう私とは大違いの女の人。
あの綺麗な人――彼女さんと折田先輩はどんな話をするのかな。
きっと彼女さんはユーモアに溢れてて話し上手で、それを折田先輩は優しい顔で聞いてるんだろうな。
先輩の不器用な優しさも、荒っぽさも、何もかも全部ひっくるめて愛してるんだろう。
そこで気づいた。
――私、折田先輩のことが好きなんだ……。
今更、恋心を自覚しても遅くて。
初恋が彼女持ちなんて、あんまりだ。
あんな綺麗な人に私が勝つなんて天地がひっくり返ってもありえない。
その前に、私は折田先輩にずっと嘘をつき続けている。
男だと偽って、騙してるんだずっと。
初恋は実らない、と言うけど本当なんだなー。
私は、芽生えたばかりの気持ちにそっと蓋をした。