獅子の皮を被った子猫の逃走劇
おにごっこ side . R
「あ。くっそ……」
視界に入り込んだと思ったら、ひらりと姿を消すあいつ。
本当に何なんだ。
ここ2週間ずっと避けられ続けていた。
「玲央、また逃げられてるー」
「うるせえ」
「どうせ何かしたんでしょ?早く謝った方がいいんじゃない?」
「……」
そんなことは誰よりも俺が分かってる。
でも謝ろうにも、目があった瞬間に逃げられるんじゃ話にならない。
どうにかして捕まえられても、俺には獅音を怒らせた心当たりもなかった。
外をきょろきょろしながら歩いている獅音を3階の窓から見下ろす。
……多分、俺が追いかけてきてないか警戒してる。
「はぁ……」
俺のため息と、獅音が俺が近くにいないと分かってホッと吐いた息が重なる。
少し手を伸ばせば、すぐに触れられる距離にこの間までいたのに。
この2週間は目も合わせられずに、それが寂しいと思ってしまう。
俺って案外女々しいのか……。
少しショックを受けながらも、目で追ってしまう好きな人の後ろ姿はあの日と一致していて。
「あー、どーゆうことなんだよ……」