獅子の皮を被った子猫の逃走劇
俺の言うあの日ってのは、梅雨で大雨が降り続けていた三連休の日のこと。
ネットやテレビでは、しきりに雨の日にはこんな遊び方が!なんてのがしきりに流れていた。
そんな日。
俺は別に家から出る用事もなかったし、家でいつも通りに過ごしていた。
面白い動画を見つけてゲラゲラ笑ってた時、一人暮らしの俺の家のインターホンがなった。
「……何の用だよ」
「よ!とりあえず付き合え」
そう言って、俺の都合もお構いなしによく分かんねえアクセサリーの店やらなんやら、どこそこ連れ回す女。
文句を言いつつも、振り切れないのは、こいつ――香織(かおり)が俺の恩人だから。
俺が、やさぐれ始めた時に出会った。
「おお、すっげえ雨。玲央、傘いれろ」
「はァ?意味わかんねえ。自分のあるだろ」
「こんな絶世の美女と相合い傘出来る機会なんてそうそうないぞ?」
黙っていれば、それなりにいい見た目なのに、口を開けばいけしゃあしゃあと。
このまま意地を張り合っていても、香織が折れないことは、経験上知っているから仕方なく入れてやった。