獅子の皮を被った子猫の逃走劇


 俺の言うあの日ってのは、梅雨で大雨が降り続けていた三連休の日のこと。

 ネットやテレビでは、しきりに雨の日にはこんな遊び方が!なんてのがしきりに流れていた。

 そんな日。

 俺は別に家から出る用事もなかったし、家でいつも通りに過ごしていた。

 面白い動画を見つけてゲラゲラ笑ってた時、一人暮らしの俺の家のインターホンがなった。


 「……何の用だよ」
 「よ!とりあえず付き合え」


 そう言って、俺の都合もお構いなしによく分かんねえアクセサリーの店やらなんやら、どこそこ連れ回す女。

 文句を言いつつも、振り切れないのは、こいつ――香織(かおり)が俺の恩人だから。

 俺が、やさぐれ始めた時に出会った。


 「おお、すっげえ雨。玲央、傘いれろ」
 「はァ?意味わかんねえ。自分のあるだろ」
 「こんな絶世の美女と相合い傘出来る機会なんてそうそうないぞ?」


 黙っていれば、それなりにいい見た目なのに、口を開けばいけしゃあしゃあと。

 このまま意地を張り合っていても、香織が折れないことは、経験上知っているから仕方なく入れてやった。
< 47 / 73 >

この作品をシェア

pagetop