獅子の皮を被った子猫の逃走劇
鬼は外、福は内?
「危なかったー!」
階段を急降下し、中庭に出た私は、第二校舎に入った。
ここは今は使われていない校舎で人気も少ない。
そんなところに何でいるのかと言うと、折田先輩から逃げていたから。
あの日、私が初めての恋心を自覚した日から早くも2週間が経っていた。
その間、ずっと折田先輩を避けてしまっている。
私だって避けたくないし、話したいけど!
なんか、好きって自覚した瞬間から、まともに目も合わせられなくなってしまった。
それに、避けた方が少しでも好きな気持ちが早く消えるかなって思ったり。
先輩には彼女さんがいるからね。
邪魔者は退場しなきゃ。
ここの校舎の大きな窓には、転落防止のためか、柵のようなものが作られている。
そこにもたれるような形でぼーっとしていると、目にゴミが入ったのか、痛みだした。
目薬を取り出そうとスカートのポケットに手を入れると、ガサッと紙の感触が。
「あー、」
ルーズリーフの端をちぎったようなそれを開き、書かれている文字列を指でなぞる。