獅子の皮を被った子猫の逃走劇


 「折田玲央に近づくな……ねぇ?」


 これが最近始まったもの。

 こんな感じの手紙が靴箱だったり机の中だったりに入っているのだ。

 いじめとも言えないからいたずら?

 おそらく折田先輩のファンクラブの人たちからのメッセージなのだろう。


 それにしても。

 近づくなも何も、私と折田先輩を繋ぐのは、総長とそのお世話係という肩書きだけなのに。

 ……そう、それだけ。

 自分で言っておきながら、深く胸に刺さった。


 最初から男装なんて変なことしなければー、とかあの時こうしてればー、とか。

 タラレバは延々と出てくるけど、そうしたからこそある今も手放せない優柔不断な私。

 考えれば考えるほど虚しくなる一方だった。


 「あっ!獅音くんみっけ!」
 「へあっ!?」


 ぼーっとしてた私は、突然の大声に驚いて、その拍子に足を滑らせて尻もちをついてしまった、のだが……。

 あぁ、神さま仏さま。
 あなた様はなんて意地悪なのでしょうか。

 もしくはこの学校の設計者。
 どうしてこんな柵を作ってしまったのでしょう。


 尻もちをつく私の前には驚き目を見開く希良ちゃん。

 そして、頭上には宙ぶらりんのウィッグ。







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