獅子の皮を被った子猫の逃走劇
その時、もう一枚紙があることに気付いた。
私の中の本能みたいなのが、それを見てはいけないと警鐘を鳴らしている。
おずおずと見てみると、
「折田玲央にお前が女だということをバラされたくなければ、明日の17時30分に、地図に示したところに来い……」
内容は、脅迫文だった。
誰が何のためにこんなことをしているのか分からない。
でも、私はこの指示通りに行く選択しか頭になかった。
本当はしぬ程怖いし、絶対何かあることは分かりきってるから行きたくないけど。
……それ以上に私は弱い。
私が折田先輩に嘘をついていたことを、バラされて失望されちゃったら……?
そう考えるだけでも血の気が引く思いだ。
この日、人生で初めての眠れない夜を過ごした。