獅子の皮を被った子猫の逃走劇

先輩はずるい




 ピピピッ、ピピピッ。

 ベッドサイドでけたたましく鳴る目覚ましをノールックで止める。

 いつもの朝なら、ここからまた二度寝フェーズに入るけど、今日はそんな心の余裕はなかった。

 というか、そもそも眠れなかった。

 安眠音声なるものを聴いてたけど、あんまり効果なかったみたいだ。

 まあ、昨日のことを考えれば無理もないよなって。


 夜中。

 何度も何度も考えた。

 もういっそのこと、自分から言ってしまえば良いんじゃないかって。

 嘘をついていたことも、好きだということも。
 もう何もかもを。

 何回もそのシチュエーションを脳内で考えてはやめて、考えてはやめて。

 結局、今回脅迫に乗らずに逃げても、次から次ヘと新たな手を使ってくるだろうと考えて諦めた。

 ……言い訳とかじゃないよ、?


 兎にも角にも。

 どんなに嘆こうが朝日は必ず登る。

 ようやく着慣れた制服――私を守ってくれる鎧に身を包み、鏡の前でスマイル!

 荷物を持って、玄関に向かった。


 「行ってきます!」
 「行ってらっしゃい」

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