獅子の皮を被った子猫の逃走劇


 「あァ?んだてめえ。俺を誰だと思ってんだごらァ」
 「……」


 大好きなヒバカリさんを装備してルンルンで歩く私の気分はまた急降下した。

 校舎裏を抜けて、もうすぐ体育館だ!というとこで男にぶつかられて今に至るのだが……。

 なんなんだこのゴリラのような男は。そっちからぶつかってきたくせに!

 ヒバカリさんパワーでちょっと強気になっている私は、心の中でそう悪口を言ってやった。

 とはいえ、そんなことをしても現実は変わらないわけで。

どう逃げようか考えていると、ある事に気づいた。
 あれ、なんかあなたの後ろからぞろぞろ人が集まって来てません、!?

 ……もしかして、こいつ偉いゴリラだった?

 薄ら見る限り、お仲間さん達の手には物騒な物が握られているように見える。
 もしかしてそれが噂の釘バットってやつですか!

 そう私が現実逃避してる間に、余計詰められてしまって、もう逃げ場は残されていなかった。

 こうゆう時をなんて言うんだったか。
 あれだ、万事休すというやつだ。


 「はっ、いいざまだな?」


 私が怯えだすのが分かったのだろう。
 目の前のゴリラもとい、大柄な男は勝ち誇った顔でジリジリと詰め寄ってくる。

 拝啓
 ハネムーンをお楽しみ中のお母さんお父さん。
 笑顔で見送りましたが、早々に桜庭獅音(16)とニュースに乗る日が来たかもしれません。
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