獅子の皮を被った子猫の逃走劇
 目の前の男が、左手で私の襟を乱暴に掴んで持ち上げた。


 「うぐっ」


 それだけでも苦しいのに、その上もう片方の手で握りこぶしを作り振り上げていた。

 あ、殴られる。

そう思って咄嗟に固く目を閉じた。


 「?」


 来るはずの衝撃はなく、いつの間にか首の圧迫感もなくなっていた。

 不思議に思い、ゆっくりと瞼を開くとそこに男はいなかった。
ただ目を見開いている仲間さん達が見えるだけ。

 ふと地面を見てみると倒れている男。


 「え」


 本日2度目のナニコレ。

 これが漫画なら、主人公の危険に颯爽と現れるヒーローが守ってくれて……、なんて展開になるけど。
 
 悲しいかな、現実はそんなに甘くなくて。

 ヒーローは見当たらない。

 一体全体、私が目をつぶっている間に何が起こったというのか。そして、この状況で私はどうすればいいのか。

 パニックになりかける私の視界の端ににちらりとそれがうつり、全てを理解した。

 ――ヒバカリさんかあ!!

 私が襟を掴まれたことにより、首元にいたヒバカリさんも自動的に苦しくなって怒り、そこの男に噛み付いたのだろう。

 毒は持ってないので、失神したのはショック的なものだと考えられる。

 一連の謎が解けたことはよしとして……。

 この状況はどうすれば良いのでしょうか。
< 7 / 73 >

この作品をシェア

pagetop