獅子の皮を被った子猫の逃走劇



 「ほーんとうに残念」
 「なにが?」
 「俺さ、お前らの前の総長に恨みあってさー。それ晴らすためにようやく虎月でここまでのし上がって来たってのに。なに?いつの間にか変わってて?それがこんなか弱い女の子?」
 「いっ……!」


 ふざけんのも大概にしろよ、という彼に腹部を思いっきり蹴り上げられた。

 お腹蹴られるのがこんなに痛いなんて知らなかった……。

 あまりの痛みに身体を丸めるようにうずめている私。

 それが気に食わなかったのか、今度は前髪をガっと掴み無理やり顔を上げさせられた。


 「あー。まじで気に食わない、なんでなんでなんで」
 「かはッ……!」


 ドス。ドス。ドス。


 何回もみぞおちの辺りを強く蹴り上げられる。

 痛いとかの次元じゃなくて。

 身体を揺らす強い衝撃に、せり上がってきた胃液が思わず飛び出した。


 私……、このままここで殺されるのかな。

 まだ足りないのか足を振り上げる彼を見て思った。

 いたい、こわい、たすけて。

 自業自得なのにそう思ってしまって。








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