獅子の皮を被った子猫の逃走劇
「こう見ると本当に女だな」
そう言って近づいて来る男。
気づいたら、ウィッグは外されていた。
近づく脅威に、私は本能的に逃げようと身体はこわばるけど、両手首と両足をそれぞれひとまとめに拘束されていた。
逃げることはおろか身動きもあまりできない。
すると、私の行動を見透かしたように彼は言う。
「馬鹿か、こんな敵のアジトのど真ん中から逃げれるわけないんだから諦めろよ」
なるほど、ど真ん中なんだ。
目線だけでもう一度周りを見ると、この部屋の中にだけでもガタイの良い男が数人いるのが分かる。
何も言い返さない私に、もっと距離を詰める彼は、私の前にしゃがみ込み顔を掴んだ。
痛い。
……当然だけど折田先輩にそれをされた時とは大違いで。
強引に掴まれた部分が痛かった。