ヤンキー高校に、やっぱりロクなのは居ませんでした。
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「オトしてどうするんですか総長」
「ごめん、ちょっと力の入れ方間違えちゃって…」
秋戸はため息をついた。今年度の4月から総長に就任した新川は、県内最恐、確かに無類の強さを誇るが、少し…
ポンコツである。
「みんな持ったな。じゃっ、せーのっ…」
総長が号令をかけると、皆が一斉に手に持っていた赤いクラッカーを鳴らした。
「「入学おめでとー!!!!」」
その凄まじい音量で、わたしは飛び起きた。
いつの間にか失神していたわたしは今、大勢の怖い人たちに囲まれて…
え、お祝いされてる??
「ちょっとお前ら、今のせーのは練習用だったんだけど」
「まあまあ良いじゃないですか、タイミングばっちりでしたし」
呆然としゃがみこむ私に駆け寄ってきた秋戸が、私と同じ目線になるまで腰をかがめ、経緯を説明してくれた。
「びっくりしたよね、ごめんね、やっと50年ぶりに女の子が入学してくれるって聞いて、すごく嬉しくて…
でも君、全然学校来てくんないから、そこの金髪くんに協力してもらって…あれ、もう帰っちゃったみたいだけど。
とにかく、派手なサプライズで、喜ばせたくて」
「そうだったんですか…私ひとりのために、こんな演出を」
秋戸は、頷き、微笑んだ。
その額にある絆創膏が剥がれかけていて、貼り直したい衝動にかられた。
わたしはずっと下ばかり向いて、表情とか優しさとか、そういうのに目を向けていなかったかもしれない。
「ごめんなさい。勝手に怖い人たちだって決めつけて、関わるとロクなことがないって決めつけて。これからはその、校内に…まずはひとけの無い空き教室とかに、週1くらいで行けたらと思います」
「本当?嬉しい。僕たち、女の子には優しくするって決めてるから。ちょっとヤンチャな高校ではあるけど、危ない目に遭わすようなことはしないし、安心して来て欲しいな。」
笑顔と拍手が拡がり歓迎ムードとなる中、どこからともなく不吉な着信音が鳴り響いた。
「誰だよこんな時に」
「ハシ高の岡留からです」
総長が渋々ケータイを受け取る。
「もしもし?はい…なんだって!?」
長々と喋っている。その口調からも、とにかく、ただ事じゃないことはわかる。さっきまでのムードは段々と薄れ、町工場のツナギみたいなのを着た人がバイクの整備をしだす。
「みんな、行くぞ!喧嘩じゃ!」
「おー!!」
さ、盛り上がってる今のうちに気配を消して帰ろう。
今度こそ帰ろう。
スポッ。
「安全のために、ヘルメット被ってね。」
「いやー!!!!」
「大丈夫よ、ただの挨拶まわりだから」
「さっきガッツリ喧嘩って言ってましたよね!?」
私を後ろに乗せたバイクは、ものすごい騒音を撒き散らして国道へ飛び出した。
「降ろしてください!」
「ハシ高ならここから10分くらい、ガソリンは持つさ」
「ガス欠の心配をしてる訳ではなくて…」
肩を落とす私をよそに、やけに短くなったスカートが、糸をなびかせ愉快に踊っていた。
「オトしてどうするんですか総長」
「ごめん、ちょっと力の入れ方間違えちゃって…」
秋戸はため息をついた。今年度の4月から総長に就任した新川は、県内最恐、確かに無類の強さを誇るが、少し…
ポンコツである。
「みんな持ったな。じゃっ、せーのっ…」
総長が号令をかけると、皆が一斉に手に持っていた赤いクラッカーを鳴らした。
「「入学おめでとー!!!!」」
その凄まじい音量で、わたしは飛び起きた。
いつの間にか失神していたわたしは今、大勢の怖い人たちに囲まれて…
え、お祝いされてる??
「ちょっとお前ら、今のせーのは練習用だったんだけど」
「まあまあ良いじゃないですか、タイミングばっちりでしたし」
呆然としゃがみこむ私に駆け寄ってきた秋戸が、私と同じ目線になるまで腰をかがめ、経緯を説明してくれた。
「びっくりしたよね、ごめんね、やっと50年ぶりに女の子が入学してくれるって聞いて、すごく嬉しくて…
でも君、全然学校来てくんないから、そこの金髪くんに協力してもらって…あれ、もう帰っちゃったみたいだけど。
とにかく、派手なサプライズで、喜ばせたくて」
「そうだったんですか…私ひとりのために、こんな演出を」
秋戸は、頷き、微笑んだ。
その額にある絆創膏が剥がれかけていて、貼り直したい衝動にかられた。
わたしはずっと下ばかり向いて、表情とか優しさとか、そういうのに目を向けていなかったかもしれない。
「ごめんなさい。勝手に怖い人たちだって決めつけて、関わるとロクなことがないって決めつけて。これからはその、校内に…まずはひとけの無い空き教室とかに、週1くらいで行けたらと思います」
「本当?嬉しい。僕たち、女の子には優しくするって決めてるから。ちょっとヤンチャな高校ではあるけど、危ない目に遭わすようなことはしないし、安心して来て欲しいな。」
笑顔と拍手が拡がり歓迎ムードとなる中、どこからともなく不吉な着信音が鳴り響いた。
「誰だよこんな時に」
「ハシ高の岡留からです」
総長が渋々ケータイを受け取る。
「もしもし?はい…なんだって!?」
長々と喋っている。その口調からも、とにかく、ただ事じゃないことはわかる。さっきまでのムードは段々と薄れ、町工場のツナギみたいなのを着た人がバイクの整備をしだす。
「みんな、行くぞ!喧嘩じゃ!」
「おー!!」
さ、盛り上がってる今のうちに気配を消して帰ろう。
今度こそ帰ろう。
スポッ。
「安全のために、ヘルメット被ってね。」
「いやー!!!!」
「大丈夫よ、ただの挨拶まわりだから」
「さっきガッツリ喧嘩って言ってましたよね!?」
私を後ろに乗せたバイクは、ものすごい騒音を撒き散らして国道へ飛び出した。
「降ろしてください!」
「ハシ高ならここから10分くらい、ガソリンは持つさ」
「ガス欠の心配をしてる訳ではなくて…」
肩を落とす私をよそに、やけに短くなったスカートが、糸をなびかせ愉快に踊っていた。