アオハル・サーキュレーター
オールバックの男と女の従業員が部屋を出て、ベレッタM9を俺は腰に差した。
少し窮屈に感じたが、これでいい。
それからすぐに引き抜き、構えるまでの動作を何度か繰り返した。だいぶ遅い。しかし、何度も何度も反復して練習する。次第に動作が早くなった気がする。あとは、一つ。引き金を引く勇気を持つこと。
これはまだまだ先だろうな、とベッドにダイブした。ベレッタの入った箱が跳ね上がり、中からメモ用紙が何枚かひらひらとベッドから落ちた。
「これは……?」
手に取ってみる。なるほど、こういうことだったか。
『腐らず、コツコツと!』
『新入社員くん、いつでもお店で待ってるよー♡』
『代行の支払いは出世払いか、カラダでね?』
これで、この銃が俺の元に来た経路がよくわかった。この2日で出会った人たちの人柄がにじみ出ているメモの数々に俺は思わず泣きそうになるほど、嬉しかった。
ミツが人を殺した。ミツが俺を殺そうとした。乱暴な女が助けてくれた。おじいさんがヤクザだった。女に殺されそうになった。車屋では黒いコートの男にぺしゃんこにされそうになった。
この2日、いつ死ぬかもしれないと気を張って、でもこういうことになって、戸惑うことも、拍子抜けすることもあったが、周りはどこか温かくて。
人間のそれが、ちゃんとある。それはきっとどの世界でも同じで、だから同じように人間のそれとして、こうなる。
自然な、至極自然なことだ。