【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 イライーダに見送られて、ルフィナは部屋を出る。いつもは夫婦の寝室でカミルの訪れを待つが、今夜はまだ就寝には少し早い。仕事をしているであろうカミルを邪魔するのは忍びないが、彼の執務室に向かうことにしたのだ。あの部屋にも、仮眠用のベッドはあるはず。もしかしたら彼がそこでサラハを抱いているかもしれないということは、今は考えないようにした。


 執務室のドアの前で、ルフィナは一度深呼吸をする。抱いてほしいと直球で告げるために、決死の覚悟でここまで来たのだ。ガウンの下に身につけているのは、薄い下着だけ。再び押し倒すような真似はしたくないが、これで抱いてもらえなかったら本当に離縁を突きつけるしかないかもしれない。
 兄の怒り狂う顔を思い浮かべるとうんざりとした気持ちになるが、仕方ない。
 ひとまず当たって砕ける覚悟で臨まねば。

 緊張しつつドアをノックしたものの、応答はない。もしや不在なのだろうかと思いつつそっとドアを開けたルフィナは、飛び込んできた光景に目を見開いた。

 そこにいたのは、カミルとサラハ。サラハは妖艶な表情でカミルにしなだれかかっている。胸の谷間が強調されるようなデザインの服を着ており、その胸はカミルの腕に押しつけられている。

「……っ」

 ひゅっと息をのむ音が、部屋の中に響く。それに気づいたサラハがちらりとこちらを見て、ルフィナに気づいた瞬間に驚いた顔をした。その表情は、泣いて身を引くと思っていたのに何故ここにいるのだとでも言いたげだ。

「え? あ、ルフィナ!?」

 驚いたように大きな声をあげたカミルは、慌てたようにサラハを振り払うと立ち上がった。こちらにやってこようとするカミルを見て、ルフィナは思わず数歩あとずさる。

「……お邪魔、でしたか」
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