【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
「もちろんです。ずっとあなたのおそばにいさせてください、カミル様」

 まっすぐに見つめて答えると、嬉しそうに笑ったカミルがそっと指輪を薬指に滑らせた。

「本当は誓いのキス……といきたいところだが、せっかくの可愛い化粧が落ちてしまっては困るからな。今は我慢しておこう」

 悪戯っぽく笑ったカミルが、その代わりというようにルフィナの指先に唇を落とした。



「ねぇ、あたしたちの存在は、完全に空気よね……」

「いつものことですわ、アイーシャ様」

 壁際で息をひそめるアイーシャとイライーダが、小さな声でそう言って肩を震わせた。

 ◇◆◇

 夜会の場は、想像以上に華やかだった。王と王妃は揃いの布を使った衣装を身に纏っており、見ているだけで仲睦まじさが伝わってくる。
 カミルと共に祝いの言葉を述べたあと、二人でのんびりとお酒を楽しんでいると、ヴァルラムが到着したとの連絡があった。思わず小さく顔をしかめたルフィナを見てカミルが笑い、守るように肩を抱いてくれる。

「大丈夫だ、俺がそばにいるから。さぁ、兄君に挨拶をしに行こう」

 明るく笑ったカミルに連れられて、ルフィナはヴァルラムのもとへと向かった。



 供の者を連れて立っているヴァルラムは、ホロウードで伝統的に着られている首元の詰まった白いジャケット姿だった。
 だがそれを見て、ルフィナは微かに眉を顰めた。正装の際に身につけるはずのサッシュがないのだ。それがなくとも服装自体に問題はないが、このような祝いの場では必ず身につけるべきものなのに。
 さすがにそれを表立って指摘することなどできず、ルフィナは黙って目を伏せる。 
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