【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 恐らくルフィナにしか分からない程度の些細なこととはいえ、ホロウードの礼装マナーなど、ここにいる者には分からないだろうというヴァルラムの嘲りが透けて見えるようで気分が悪い。
 王に挨拶を終えたヴァルラムに、カミルがすっと近づいた。

「ヴァルラム殿下、遠いところをよくお越しくださいました」

「お久しぶりです、カミル殿下。お招きいただき、ありがとうございます。ルフィナも、久しぶりだね。良くしていただいているようで、兄としても嬉しいよ」

 カミルの言葉に、兄はにこやかな笑みを浮かべる。外面のいい彼は、ルフィナにも穏やかな微笑みを向けてきた。
 同じように微笑み返そうと思ったが、明らかにアルデイルを下に見ているようなヴァルラムの態度に腹を立てていたルフィナは、無表情のまま彼をにらむように見つめ返した。
 従順なはずの妹がそんな顔を向けてくるとは思わなかったのか、ヴァルラムは一瞬驚いたように目を見開く。そして激しく苛立ったように瞳の奥を怒らせた。
 ぷいと顔を背け、ルフィナは見せつけるようにカミルの腕を強く抱きしめた。

「おかげさまで、とても幸せですわ。お兄様こそ、お元気そうで何よりです」

 にっこりと笑ってみせたあと、頬に手を当ててルフィナは首をかしげた。

「ですが、少々お疲れのご様子。いつもご自分のマナーにも厳しいお兄様ですのに、お召し物が乱れておりますわ。珍しいこともあるものですね」

「……っ」
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