【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 ルフィナの母親リージヤは、確かに誰よりも美しかった。王の寵愛を一身に受けた彼女は、やがて一人娘であるルフィナを産んだ。だが彼らは自分たちの子供を育てることよりも、お互いを愛しあうことに忙しくて、ルフィナはほとんど両親に顧みられないまま乳母に育てられた。

 明らかに王の血を引いている薄紫の髪を持っていたことと、後継争いに関与しない女児であったことから、ルフィナは命を狙われることなく過ごすことができた。もしもルフィナが王子であったなら、生まれ落ちたその日に殺されていたかもしれないが。

 もちろん、王を骨抜きにした側妃をよく思わない者はたくさんいた。
 何の教養もない、ただ見てくれがいいだけの女。それが王宮内でのリージヤの評判だった。事実彼女は文字の読み書きすら怪しかったし、マナーも何一つ身につけていなかった。だが何年経っても、子供を産んでさえ彼女の美貌は衰えず、黙って微笑んでいればその姿は女神と称されるほどに美しかった。
 その微笑みは王ただ一人に向けられ、王はいっそう彼女を溺愛した。

 このままでは国が傾くと、リージヤのもとには刺客が幾人も送り込まれ、その結果数年前に彼女は昏睡状態となった。無知で人を疑うということを知らなかったリージヤは、差し入れられた毒入りの菓子を無邪気に食べたのだ。
 眠っていてなお美しい彼女のもとから王はますます離れなくなり、今では王太子であるヴァルラムがほとんど王の仕事を肩代わりしている状況だ。


 ルフィナが二十歳の成人を迎えると、ヴァルラムは近いうちにアルデイルに嫁ぐようにと命じてきた。
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