【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 にっこりと笑うカミルの表情は真剣で、万が一そんなことがあれば、彼は躊躇いなくヴァルラムを討つのだろう。
 それほどまでに強い想いを向けられているのだなと思いながら、ルフィナはカミルに強く抱きついた。

 ◇

 しばらく夜会を楽しんでいると、入り口付近で微かなざわめきが起きた。
 何だろうと首をかしげたルフィナに、カミルはにやりと笑い、行こうと声をかける。
 連れられて行った先には、サラハの姿があった。薄桃色のドレスに身を包んだ彼女は相変わらず可憐だ。

 一瞬足を止めたルフィナの背を、大丈夫だというように叩いたカミルは、そのまま彼女のそばに歩いていく。王に挨拶をしていたサラハを囲うように、会場の中心に集まるような形となった。
 アルゥの香りを嗅ぎたくないルフィナはあまり近づきたくなかったのだが、カミルは大丈夫だからと笑うばかり。二度とアルゥの香りを嗅がせないと約束してくれたカミルを信じながらも、ルフィナは極力鼻で息をしないよう意識する。

「やぁ、サラハ。来てくれて嬉しいよ」

「ご招待いただきありがとうございます、カミル様」

 カミルに声をかけられて笑顔で挨拶をするサラハは、やはり守りたくなるほど儚げで可愛らしい。ドレスのデザインは可憐だが、深く開いた胸元や腿に入ったスリットなど妖艶さも兼ね備えている。
 見るからに高級な仕立てだと分かる美しいドレスは、サラハに良く似合っていた。 
 だが彼女は、ルフィナの顔を見た瞬間に信じられないといった様子で表情をこわばらせた。すぐに取り繕うように笑みを浮かべたが、その頬は微かに青ざめている。
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