【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 だが、客観的に見ればサラハのしたことは反逆罪と捉えられてもおかしくない。重い処罰を与えることも検討されたが、ルフィナとカミルに二度と接触しないことを条件に彼女は城から遠く離れた国境近くで、アルゥを育てる仕事につくことになったそうだ。
 厳しい監視下で荒れた土地を一から耕し、アルゥを育てることはかなり困難な作業になるだろう。
 アルゥの実を育てる一族でありながら、農作業は汚れるし疲れるから嫌いだと城に果実を届ける役ばかりを選んでいた彼女には、一番適した罰かもしれないとカミルは語った。

 サラハの父親である宰相は、自分の娘がしでかしたことに酷くショックを受けて職を辞すと申し出てきたが、王がそれを断った。彼自身はサラハの企みに全く関与していなかったし、彼は王の右腕として優秀なのだ。それでも娘の監督責任を問われ、大幅な減給となったが、彼はそれで済むのならと喜んで受け入れたという。


 穏やかな日常を取り戻したルフィナは、苦手だったアルゥの香りも少しずつ克服した。
 まだ食べようとすると吐き気に襲われるが、匂いを嗅ぐくらいなら平気になったのだ。もともと、精神的なストレスからくるものだったのだろう。
 それでもカミルは、ルフィナが嫌うならと好物だったアルゥの実を口にすることをやめてしまった。匂いのせいでまたルフィナに拒絶されたら立ち直れないからと、彼は笑う。
 毎晩のようにカミルに抱かれているものの、まだルフィナのお腹に彼の子が宿る気配はない。
 少し前までなら、一刻も早く世継ぎを産まねばならないと焦っていたかもしれないが、今はそんなに気にすることなく過ごせている。
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