【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 振り返った時には、ヴァルラムはルフィナに見せた冷たい表情をあっという間に引っ込めている。彼は、外面だけは完璧なのだ。優しくエスコートするように背中に回された手だけは、まるでルフィナに触りたくないというように絶妙な距離を保っているけれど。

 とはいえルフィナだって、そんな兄のことばかり気にしてはいられない。控えめで可憐な笑みを浮かべると、ルフィナは深く頭を下げた。

「はじめまして、カミル殿下。ルフィナと申します。お会いできて光栄です」

 笑顔を保ったままゆっくりと顔を上げれば、背の高い男性と目が合った。色の濃い金の髪を持つ彼は、瞳も同じ色をしている。鋭い目でルフィナを値踏みするように見つめているが、顔立ちはかなり整った部類に入るだろう。ルフィナより三つ年上の二十三歳だと聞いていたが、大人びた顔立ちは彼をもう少し年上に見せている。

 そして何より気になるのは、彼の頭の上にあるふたつの丸い耳。そして背中からちらりとのぞく尻尾。

――ふわふわ、もふもふだわ……!

 思わずそちらに視線が吸い寄せられそうになるのを堪えて、ルフィナは口角を上げ続ける。

「はじめまして、ルフィナ姫。こちらこそ、お会いできて光栄です」

 そう言って握られた手は思った以上にあたたかく、大きかった。少し冷たそうに見えるものの、ルフィナを見つめる視線は案外柔らかい。

 金の髪からの連想か、ルフィナは彼のことを太陽みたいだと思った。凍てつく大地を優しく照らし、氷を溶かしてくれるあたたかな太陽。冬の長いホロウードにおいて、陽光は春を告げる希望の光。
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