【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
「ありがとうございます。アルゥの実は、甘くて美味しい上に栄養価も高いのですよ。ぜひ、ルフィナ様にも食べていただきたいです」

 アルゥは栽培方法が兎獣人にしか伝えられていない貴重なもので、時々王に献上しているという。いつか、ルフィナも口にする日が来るだろうか。

「もしもいただくことがあったら、その時はサラハに感想を伝えるわね」

「えぇぜひ」

 にっこりと笑いあったところで、サラハが時計を確認して立ち上がった。

「では、わたくしはそろそろ」

「ありがとう、サラハ。どうか、カミル様のことをよろしくね」

「もちろんです。次回は三日後にいたしましょうか。殿下のお気持ちを、わたくしも聞き出すようにいたしますし、またルフィナ様にご報告しますわ」

 笑顔でそう言うサラハの顔には、職務なのでという真面目な表情が浮かんでいる。この可憐な人が、カミルと触れ合うのだと思うと少し胸が苦しくなるが、ルフィナは黙って胸を押さえることでそれをやり過ごした。

 国が違えば閨の作法が違うことは当然だ。アルデイルのやり方に、慣れていかなければならない。

 部屋を出ようとしたところで、サラハがふと立ち止まって振り返った。

「そうそう、大切なことを申し上げそびれていました。ルフィナ様が閨の教育を受けておられることは、殿下にはくれぐれもご内密に」

「え? あ、そうなのね」

「初夜でのことは、お二人の秘密なのでしょう。わたくしは一切口外しないと誓いますが、ルフィナ様が閨の教育を受けたと殿下が知れば、秘密が漏れたかもしれないと余計な気を揉ませてしまいます」

「分かったわ、カミル様には黙っておきます」

「それがよろしいかと」
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