【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 昼過ぎ、カミルと約束した庭の四阿へ向かうと、彼はもうすでに到着していた。

「お待たせして申し訳ありません、カミル様」

「いや、俺も今来たところだ。――あぁ、お茶の準備が終わったら、きみたちは下がってくれ」

 ルフィナに付き添ってきた侍女のイライーダや、護衛と思しき男性にカミルが声をかける。アイーシャが言ったように、念入りに人払いをするつもりらしい。
 二人きりになったところで、こんな場所で抱かれるとは思わない。どうせなら夜にこうして二人の時間を取ってくれればいいのにと思うのは、きっとルフィナの我儘なのだろう。

「最近、きみとゆっくり過ごす時間があまり取れていなかったから」

 そう言ってお茶を飲むカミルの横顔は、少し疲れて見える。夜遅くまで仕事をしているし、もちろん日中にも忙しくしているのを知っている。

「香油を持ってくれば良かったですわ。以前に学んだ手のマッサージを、カミル様にして差し上げられたのに」

「それなら、香油なしでも構わない。ぜひしてもらいたいな」

 ほら、と手を差し出されて、ルフィナは戸惑いつつ彼の手を握った。大きく分厚い手は、とてもあたたかい。

 サラハに教えられたことを思い出しながら、ルフィナはそっとカミルの指を撫でたあと、爪の付け根をぐっと強めに押した。その瞬間カミルが小さく息を詰める。

「……っ」

「あ、申し訳ありません、痛かったですか?」

 慌てて手を離して見上げると、カミルはぷるぷると首を振った。

「いや……、大丈夫だ。続けてくれる?」

「はい」
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