【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 再び差し出された手を取って、ルフィナは一生懸命に指をマッサージしていく。少しでも彼の疲れが癒えるようにと祈りを込めながら指を撫でさすっていると、時折カミルが息を詰めたり吐息を漏らす。それがやけに艶めいて聞こえて、何だかドキドキしてきた。

「……きみにこうして触れられるのは、久しぶりだな」

 カミルの言葉に、ルフィナは顔を上げた。

「そうですね。初夜以来、でしょうか」

 マッサージをしていた手を止めて、ルフィナはそのまま彼の手を握りしめる。あたたかな手はルフィナを拒絶していないように思うのに、彼は一向にルフィナに触れてくれない。

「どうして……どうして抱いてくださらないのですか」

 思わず漏れた言葉に、カミルがぴくりと身体を震わせるのが分かった。逃げられないようにと握りしめた手に力を込めて、ルフィナはまっすぐに見上げる。

「私はずっと……カミル様に抱いていただきたいと、そう思っています。お世継ぎを産むために努力するのは、私たちの義務です」

「ルフィナ」

「あなたの欲を受け止めるのだって、妻たる私の役目ですわ。私、色々お勉強しましたの。今度こそカミル様に満足していただけるよう頑張ります」

――だから、閨の担当者なんて要らないと言って。いつか私をつがいだと言って。

 本当に伝えたかった言葉は、喉につかえて出てこない。


 うつむいたルフィナを、カミルがそっと抱き寄せる。あたたかな身体に包まれて、それだけで嬉しくてたまらなくなる。
 だけど抱いてもらえないのなら、執着するほどに求めてもらえないのなら、このぬくもりに縋るわけにはいかない。
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