凄腕レーサーは中身も最上級〜夢見る乙女を眠らせない〜
「そうだな」

真っ赤な顔をしていた琴を思い出してフッと笑ってしまう。

「そんな顔初めて見たぞ」

「どんな顔だよ」

「ククク。あ、モナコの家、見つかりそう?」

「ああ。だいたいの目処は何件かついたよ。あとは琴に選んでもらう」

「そうか。日本だとやっぱりなかなか帰れないもんな。モナコはいい所だぞ?」

レイモンドはクルーチーフをしていて、モナコに住んでる。

俺に勧めてきたのもレイモンドだ。

「そうだな。引っ越したらよろしくな」

「楽しみだな。まず今シーズン乗り切ろう」

琴と会えない寂しさはあるものの、すこぶる調子が良い。

特に中国でのレースはおまじないをもらったからかなかなかのタイムだった。

勝利の女神なんじゃねぇの?
って思ってる。

俺は準備できたばかりの結婚指輪を取り出す。
お守り代わりと言ったらなんだが、持ってきた。

パカっと箱を開けて二つ寄り添うように入った指輪を見てどこか力が湧いてくる。

おし。

蓋を閉めバッグに押し込んだ。




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