御曹司様の一目惚れ人生ゲーム〜私はただ愛されたかっただけ〜花村三姉妹   葉子と仁の物語
救急車で近衛総合病院まで5分もかからないが、私にはそれ以上長く感じられた。定期的にくるお腹の痛みが増しているが、これが陣痛によるものなのか、お腹を蹴られたからなのかわからない。ただ、今まで経験したことのない痛さがさらに強くなってくる。


怖い、怖いよ。
赤ちゃんたちは?
どうなっちゃうの?
仁、そばにいてほしい。




近衛総合病院に着いてすぐさまLDR分娩室へ運ばれた。看護師さんたちが腕に管を通したり、お腹に何かを貼り付けたりしている。ベッドの横のモニターが表示され、機械音が鳴り出す。翔子先生が内診をしている間にも痛みが波のように押し寄せ、痛みを逃すために思わず息を止めてしまう。すかさず看護師さんから、酸素が赤ちゃんたちに十分回っていないと注意された。


本来なら数日後に計画出産予定をしていたが、破水して子宮口の開きがすでに5センチとかなり進んでいたため、このまま出産準備に入った。


ベッドで横向きになり、猫のように背中を丸くし、鋭いもので刺される。しばらくしてお腹の痛みが減少し、下半身が温かく感じる。しかし、足に触れられても感覚はない。


これからどうなるのかと不安にさいなまれていると、ドアが乱暴に開けられた。


「ハァハァ……、葉子ちゃん! だ、大丈夫か?」


今一番会いたくて、そばにいて欲しい人が息を切らせて駆け寄ってくる。緩められたネクタイ、今朝ワックスで整えられた髪は少し乱れ、毛先から玉のような汗が流れ落ちた。スーツのジャケットを脱いだ彼のワイシャツの背中は汗で湿っている。

汗と混ざった心地よいスパイスと柑橘系の香り……、仁の香りだ。安心する。


しかし連絡していないのになぜ?


「仁、どうして? 会議は?」

「フーっ、ハァー、涼介から電話が入った……。会議はじいちゃんとおやじがいるから心配ない」

「もしかして走ってきたの?」

「ああ。メイン通りで事故があって通行止めだったから、商店街を突っ走って来た」


優しい笑顔で私の頭を大きな手で撫でてくれる。


「遅くなってごめん。よく一人で頑張ったな。ここからは俺も一緒だ」

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