御曹司様の一目惚れ人生ゲーム〜私はただ愛されたかっただけ〜花村三姉妹   葉子と仁の物語
ゆっくり立ち上がり、もう一度潮の香りを吸う。


やっぱり違うな、地元の香りとは……。


海を背に歩き出すと、離れた公園の入口に人がいるのに気がついた。


珍しいな、こんな朝早く私以外にここに来る人がいるなんて。しかし、眩しいな……。


まだ朝の6時前だが、もうすでに徐々に気温が上がってきている。眩しい朝日を避けるためにツバの広い麦わら帽子をかぶり、俯きながら入口があるその人の方へゆっくり歩いて行く。


視野が狭くなった私の目に、その人の白と黒のローカットスニーカーが映ったときは、ぶつかる寸前だった。


「すみません」


焦って謝罪をして、その人を見上げてハッとする。


なんで、なんで、嘘でしょう?


その人から逃げるように今来た道を全力で走ったが、妊娠中の私の体では重くて以前のように軽やかに走れない。気が動転していて道の段差に気が付かず、前のめりに倒れるところを、逞しい腕の中に閉じ込められる。


「バカやろー、おまえと俺たちの子に何かあったら、どうするんだ!」


久しぶりに聞く口の悪い言葉。転ぶ前に、ここにいるはずもない仁に助けられた。


「大丈夫か? 怪我しなかったか? 痛いところはないか?」


次々に飛んでくる彼の言葉に、本当に心配されている感覚に陥る。


どうしてここにいるの?
どうして心配しているフリをするの?
ああ、見つかっちゃったのか……。


どうせ逃げても無駄なら、今決着をつけて終わらせよう。もう苦しまないために。

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