今夜、上司と不倫します  不倫したら一億円もらえるって本当ですか!?
「さっきから出てこないが、大丈夫か?」
「大丈夫です」
「それなら出てきたらどうだ。君の好きそうなケーキもあるぞ」
 ケーキは好きだが、こんなかっこうで出て行くなんて。

 だが、行くしかない。
 首を切られたくないし、報酬の一億円があればみんなが助かる。
 亜都は自分の拳をぎゅっと握りしめてこれまでのことを思い出し、深呼吸をしてから脱衣所の扉を開けた。

「なっ!」
 バスローブ姿の亜都に、怜也は驚きの声を上げた。
「待て、なんでそんなかっこうなんだ!」
 目を逸らしながら怜也が言う。

「さっきの方が、服が汚れたから洗って下さると言って」
「だが、そのかっこうでは」
 目を逸らしたまま、怜也が言う。

 ここからどうやってそういう方向に持って行けばいいのか、亜都にはまったく見当がつかない。
 だから真正面から怜也に抱き着いた。

「こ、琴峰さん!?」
 彼は慌てて亜都の肩に手をかけ、引き剥がそうとする。

「お願いですから……お願いです」
 それだけしか言えず、亜都は離れまいとしがみつく。
 揉み合ううちに亜都がバランスを崩した。
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