今夜、上司と不倫します  不倫したら一億円もらえるって本当ですか!?
「夫にはまだ言えていないのです。でも、残されたあの方を思うと……今のうちに、なにかしてあげたくて」
「……気持ちはわかります」
 だが、それと今の話はどうつながるのだろう。

「女性がいれば、私がいなくても寂しくないのではないかと思うのです。どうかお願いします。あなたならば好みに合っているのです」
「私なんか」
 美しい清良とは段違いに平凡で、どこにでもいる地味なOLだ。きれいな人はいくらでもいるだろうに、よりによって自分なんて。

「一夜だけでもいいのです。どうか、お願いします」
「……無理です」
「もちろん報酬をお支払いします。一億ほどでよろしいかしら」
「一億!?」
 亜都は思わず叫んだ。

 一億あれば、工場の借金を返して当面をしのぐこともできるはずだ。
 工場のおじさんたちの笑顔が思い浮かぶ。父の生きがいを守り、さらに彼らの居場所を守ることができるのだ。
 ただ一晩、亜都が我慢すれば、みんなを守れる。

 だが。
 好きな人がいてもなかなかアプローチできない性格なのに、好きでもない人を誘惑して関係を持つなんて、とうてい自分にはできそうもない。

「ただし」
 清良は亜都の返事を待たずに続ける。
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