僕は彼女をこよなく愛している
「――――いい?
何度も言うけど、何かあったらすぐ連絡してね?」

霞月の右手首を持ち、反対は頬に触れて顔を覗き込むようにして言い聞かせている実陽。

「うん」

「終わったら、ここで待つこと!
まぁ…終わる前には、僕がここで待ってるけど」

「わかった」

「………」

「………」

「………」

「実陽」

「何?」

「痛い…」

「え?」

「手」

「え?あ!?
ご、ごめんね!!」
思わず手を握りしめていた、実陽。
慌てて、バッと離した。

「ううん。
とにかく行くね。
もうすぐ時間だし」

「う、うん。
るなちゃんごめんね!ほんと、ごめん!ごめんなさい!」

「ううん」
霞月が小さく手を振り、中に入っていく。
その背中に、何度も謝罪したのだった。


「………」
(手形、ついてる…)
席につき、手首をさする。

実陽って、こんな力強いんだ…
確かに怒ってるの見た時、相手の手を握り潰してたもんな…

霞月はなんだか、切なくなる。

こんな実陽は嫌だな……
優しくて穏やかで、いつも笑ってて、甘えん坊な実陽がいい……!

講義が終わり、講義室を出た霞月。
その瞬間………

「るなちゃん!!」
実陽の腕の中にいた。

「え……ちょ…実陽!
こんなとこで抱きつかないで!!離して!」

「ごめんね!ごめんね!」

「もういいから!お願い、離して!」

「手、見せて?」

「………嫌」

「どうして?」

「どうしても」

「怒ってるの?」

「怒ってないよ」

「手、繋ご?」

そう言われて、左手を出す霞月。
「………左?いつもは、右手で手を繋ぐでしょ?」

「こっちの気分なの」 

「………」

「………実陽?繋がないの?」

「るなちゃん、ちょっとごめんね」
そう言って、無理矢理右手を掴んだ。

「ちょっ…痛い!」

「………やっぱり…」
霞月の右手首は、時間が経って青ジミになっていた。

「………」

「痛い?」

「………痛い…」

「だよね…
ごめんね…」
ゆっくりさする。

「実陽、もう…大丈夫だから」

「本当に、ごめんなさい。
るなちゃんを傷つけるなんて…最低だ、僕……」

「ほんとに、大丈夫だって」

「ごめんなさい…」

「実陽」 

「ごめ……うぅ…!」
実陽の頬を包み込んだ、霞月。

鋭い視線で見上げていた。

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