あやめお嬢様はガンコ者
「へえ、あやめさんでもじゃがいもとか買うんだ」
今夜の夕食の食材を選んでいると、久瀬くんが隣で独りごちる。
「もちろん買いますよ。今日は他にも、ほうれん草とにんじんとナスとひき肉と……」
「ええ?意外!」
「サンドライドトマトとモッツァレラチーズと……」
「ああ、似合う!」
私は眉をハの字に下げて久瀬くんを振り返った。
「久瀬くん、頭の中のメモが飛んじゃいます」
「ああ、ごめんなさい。静かにしますね」
久瀬くんは私の手からひょいとカゴを取り上げると、一歩後ろを黙ってついて来る。
お会計を済ませてエコバッグに詰めると、それもさり気なく横から手を伸ばして持ってくれた。
「ありがとうございます」
「いいえ、これくらい当然です」
歩いて5分足らずのマンションに帰って来ると、久瀬くんは玄関の前で私にエコバッグを差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
「では、俺はここで。また明日8時にお迎えに来ます。おやすみなさい」
そう言って背を向ける久瀬くんを、私は思わず「あの!」と呼び止めていた。
「よかったら、夕食食べて行ってください」
「え、いいんですか?」
「はい。大したものは作れませんけど……。あ!玉ねぎ!」
いきなり大きな声を出す私に、久瀬くんはビクリとする。
「た、玉ねぎがどうしました?買い忘れましたか?」
「いえ、あの。今夜は玉ねぎを使う献立ではないので、私が玉ねぎを切ると涙が出る検証が出来ないと思いまして」
久瀬くんはキョトンとしたあと、声を上げて笑い出した。
「ははは!あやめさん、律儀というかなんというか、ほんとに意地っ張りですね」
「え?どうしてそうなるの?」
「だって夕べ泣いたことをまだ認めるつもりないんでしょ?素直になればいいのに」
「ですからあれは、玉ねぎのせいで」
「はいはい。さ、中に入りましょうよ」
軽く笑って聞き流され、私は渋々玄関のカギを開けた。
今夜の夕食の食材を選んでいると、久瀬くんが隣で独りごちる。
「もちろん買いますよ。今日は他にも、ほうれん草とにんじんとナスとひき肉と……」
「ええ?意外!」
「サンドライドトマトとモッツァレラチーズと……」
「ああ、似合う!」
私は眉をハの字に下げて久瀬くんを振り返った。
「久瀬くん、頭の中のメモが飛んじゃいます」
「ああ、ごめんなさい。静かにしますね」
久瀬くんは私の手からひょいとカゴを取り上げると、一歩後ろを黙ってついて来る。
お会計を済ませてエコバッグに詰めると、それもさり気なく横から手を伸ばして持ってくれた。
「ありがとうございます」
「いいえ、これくらい当然です」
歩いて5分足らずのマンションに帰って来ると、久瀬くんは玄関の前で私にエコバッグを差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
「では、俺はここで。また明日8時にお迎えに来ます。おやすみなさい」
そう言って背を向ける久瀬くんを、私は思わず「あの!」と呼び止めていた。
「よかったら、夕食食べて行ってください」
「え、いいんですか?」
「はい。大したものは作れませんけど……。あ!玉ねぎ!」
いきなり大きな声を出す私に、久瀬くんはビクリとする。
「た、玉ねぎがどうしました?買い忘れましたか?」
「いえ、あの。今夜は玉ねぎを使う献立ではないので、私が玉ねぎを切ると涙が出る検証が出来ないと思いまして」
久瀬くんはキョトンとしたあと、声を上げて笑い出した。
「ははは!あやめさん、律儀というかなんというか、ほんとに意地っ張りですね」
「え?どうしてそうなるの?」
「だって夕べ泣いたことをまだ認めるつもりないんでしょ?素直になればいいのに」
「ですからあれは、玉ねぎのせいで」
「はいはい。さ、中に入りましょうよ」
軽く笑って聞き流され、私は渋々玄関のカギを開けた。