あやめお嬢様はガンコ者
「それではさちさん、大変お世話になりました」
食事を終えると支度を整え、久瀬くんと二人で玄関を出る。
ハイヤーまで見送りに来たさちさんに、久瀬くんは改まって頭を下げた。
「こちらこそ。久瀬様、またどうぞお越しくださいませ」
「はい、ありがとうございます。それでは、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
走り始めた車の中で、私は何を話そうかと考えあぐねる。
自分の知らない間に、久瀬くんがさちさんや父と何を話していたのだろうかと気になった。
「あの、久瀬くん。夕べは何時頃ここに?」
「ん?ああ。九時半頃です。あやめさんをベッドに寝かせて帰ろうとしたら、ちょうど帰宅された社長にばったりお会いして、一緒にお酒でもと誘われたんです。ついつい話し込んでしまって、社長がもう遅いから泊まっていきなさいと。さちさんが着替えと部屋を用意してくれて、服も洗濯してくれたんです。とてもお世話になったので、よろしくお伝えください」
「そうでしたか、分かりました。って、え?久瀬くん、今私をベッドに寝かせたっておっしゃいました?」
「はい。タクシーからお部屋まで運んで。さちさんが案内してくれました」
「そ、それは重いところを大変失礼しました」
「重いところをって、ははは!そんなことないですよ」
「いえ、殿方に運んでいただいたなんて、もう恥ずかしくて。二度と外では酔わないよう、肝に銘じます」
うつむいて顔を赤くしていると、久瀬くんが覗き込んできた。
「俺と一緒の時ならいいですよ。でも俺がいない時はダメですからね」
「は、はい?久瀬くんと一緒でもダメですよね」
「いいです。俺が運ぶので」
そう言うと久瀬くんは、反対側の窓から外の景色を眺め始める。
私はどうにもドキドキしたまま、必死に気持ちを落ち着かせようとしていた。
食事を終えると支度を整え、久瀬くんと二人で玄関を出る。
ハイヤーまで見送りに来たさちさんに、久瀬くんは改まって頭を下げた。
「こちらこそ。久瀬様、またどうぞお越しくださいませ」
「はい、ありがとうございます。それでは、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
走り始めた車の中で、私は何を話そうかと考えあぐねる。
自分の知らない間に、久瀬くんがさちさんや父と何を話していたのだろうかと気になった。
「あの、久瀬くん。夕べは何時頃ここに?」
「ん?ああ。九時半頃です。あやめさんをベッドに寝かせて帰ろうとしたら、ちょうど帰宅された社長にばったりお会いして、一緒にお酒でもと誘われたんです。ついつい話し込んでしまって、社長がもう遅いから泊まっていきなさいと。さちさんが着替えと部屋を用意してくれて、服も洗濯してくれたんです。とてもお世話になったので、よろしくお伝えください」
「そうでしたか、分かりました。って、え?久瀬くん、今私をベッドに寝かせたっておっしゃいました?」
「はい。タクシーからお部屋まで運んで。さちさんが案内してくれました」
「そ、それは重いところを大変失礼しました」
「重いところをって、ははは!そんなことないですよ」
「いえ、殿方に運んでいただいたなんて、もう恥ずかしくて。二度と外では酔わないよう、肝に銘じます」
うつむいて顔を赤くしていると、久瀬くんが覗き込んできた。
「俺と一緒の時ならいいですよ。でも俺がいない時はダメですからね」
「は、はい?久瀬くんと一緒でもダメですよね」
「いいです。俺が運ぶので」
そう言うと久瀬くんは、反対側の窓から外の景色を眺め始める。
私はどうにもドキドキしたまま、必死に気持ちを落ち着かせようとしていた。