あやめお嬢様はガンコ者
「おはようございます、あやめさん」
翌朝。
いつものように出社して、いつものように挨拶する。
「おはようございます」
微笑み返してくれるあやめさんは、少し元気がない。
だが仕事を始めると気持ちを切り替えて集中するあやめさんは、やっぱり芯が通っていてかっこいい。
俺もがんばらなくてはと、いつも以上に仕事に打ち込んだ。
午後になると、俺はあやめさんと一緒に社長室に呼ばれた。
「ご苦労様。改めて二人に話があってね」
社長に促されて、俺はあやめさんとソファに並んで座る。
向かい合った社長は、コーヒーをひと口飲んでから切り出した。
「そろそろ新部署の発足を発表しようと思う。だがやはり、様々な声が社内で上がるだろう。なにせ二人ともまだ20代で部長になるわけだからな。そこで念の為確認したい。あやめは私の娘で久瀬くんと婚約している、という話はなかったことにしていいのだな?」
え?っとあやめさんが驚いたように聞き返す。
「どういうことですか?なぜ久瀬くんが私の婚約者だと?」
「そう言うことにしておけば、久瀬くんに対する風当たりが弱まるだろうと思ったからだ。まあ、面と向かって久瀬くんに文句を言うような社員はいないと思うけど、内心モヤモヤはするかもしれない。少しでも久瀬くんを守る盾になればいいと思ってね」
「久瀬くんを、守る……」
あやめさんは視線を落として、真剣な表情を浮かべた。
俺の為にそうしようかと考えているのかもしれない。
だが俺はあやめさんを守る立場だ。
あやめさんに守られるようではいけない。
「社長、お気遣いは大変ありがたいですが、私はどんな言葉を向けられても構いません。どんな批判も受け入れ、必ず実績で納得させてみせます」
きっぱりそう言うと、あやめさんはハッと俺に目を向ける。
俺は大丈夫だというように、あやめさんに頷いてみせた。
「そうか、分かった。では近々全社員に向けて発表する。何か気になることを言われたら、いつでも私に相談するように。いいね?」
「かしこまりました。ありがとうございます」
そして3日後に、新部署の発足と俺達の人事異動が正式に発表された。
翌朝。
いつものように出社して、いつものように挨拶する。
「おはようございます」
微笑み返してくれるあやめさんは、少し元気がない。
だが仕事を始めると気持ちを切り替えて集中するあやめさんは、やっぱり芯が通っていてかっこいい。
俺もがんばらなくてはと、いつも以上に仕事に打ち込んだ。
午後になると、俺はあやめさんと一緒に社長室に呼ばれた。
「ご苦労様。改めて二人に話があってね」
社長に促されて、俺はあやめさんとソファに並んで座る。
向かい合った社長は、コーヒーをひと口飲んでから切り出した。
「そろそろ新部署の発足を発表しようと思う。だがやはり、様々な声が社内で上がるだろう。なにせ二人ともまだ20代で部長になるわけだからな。そこで念の為確認したい。あやめは私の娘で久瀬くんと婚約している、という話はなかったことにしていいのだな?」
え?っとあやめさんが驚いたように聞き返す。
「どういうことですか?なぜ久瀬くんが私の婚約者だと?」
「そう言うことにしておけば、久瀬くんに対する風当たりが弱まるだろうと思ったからだ。まあ、面と向かって久瀬くんに文句を言うような社員はいないと思うけど、内心モヤモヤはするかもしれない。少しでも久瀬くんを守る盾になればいいと思ってね」
「久瀬くんを、守る……」
あやめさんは視線を落として、真剣な表情を浮かべた。
俺の為にそうしようかと考えているのかもしれない。
だが俺はあやめさんを守る立場だ。
あやめさんに守られるようではいけない。
「社長、お気遣いは大変ありがたいですが、私はどんな言葉を向けられても構いません。どんな批判も受け入れ、必ず実績で納得させてみせます」
きっぱりそう言うと、あやめさんはハッと俺に目を向ける。
俺は大丈夫だというように、あやめさんに頷いてみせた。
「そうか、分かった。では近々全社員に向けて発表する。何か気になることを言われたら、いつでも私に相談するように。いいね?」
「かしこまりました。ありがとうございます」
そして3日後に、新部署の発足と俺達の人事異動が正式に発表された。