あやめお嬢様はガンコ者
「あやめさん、カフェテリア行きましょ!」
12時になると、パソコンを閉じた由香里ちゃんが声をかけてくる。
「うん、ちょっと待ってね」
私もパソコンをシャットダウンしてから、小さなバッグを持って立ち上がった。
二人で3階のカフェテリアに行く。
「今日の日替わりランチ、ゴーヤチャンプルかあ。あやめさん、ゴーヤ好きですか?」
「ううん、苦手なの」
「ですよねー、私も苦くて好きじゃないんです」
「でも今日は食べてみるわ」
「ええ!?どうして?」
「戦ってみたい気分なの、苦みと」
あはは!と由香里ちゃんはおかしそうに笑う。
「じゃあ私も戦います!よし、来い!ゴーヤ」
二人でゴーヤチャンプルをトレイに載せて社員証でタッチ決済を済ませると、空いている席を探す。
「んー、どこがいいかな。あ、窓際空いてますよ」
由香里ちゃんはスタスタと景色がよく見える席に近づくと、「ここ、空いてますかー?」と近くに座っている男性二人組に明るく声をかけた。
「はい、どうぞ。……って、東か」
「久瀬くん!」
私は由香里ちゃんの後ろでギクリとする。
そっと顔を覗かせると、ちょうどこちらを見た久瀬くんと目が合った。
「あやめさん、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
「ここ空いてますから、どうぞ」
「はい、失礼いたします」
大きな楕円形のテーブルで、久瀬くんは同じ営業部で一つ年上の原口くんと向かい合って座っていた。
由香里ちゃんが原口くんの隣に座り、私は久瀬くんの隣の席に着く。
「東もあやめさんも、ゴーヤ好きなんですか?」
何気なく言った久瀬くんに、由香里ちゃんが笑顔で答える。
「ううん。私もあやめさんもゴーヤ苦手なの」
「へ?じゃあ、なんで頼んでんの?」
「戦おうと思って。ね?あやめさん」
ええ、と頷くと、久瀬くんはポカンとしながら返す言葉に詰まっている。
「いざ、勝負!いただきます!」
由香里ちゃんに続いて私も「いただきます」と手を合わせた。
二人同時に、ゴーヤをパクリと口に入れる。
「んー、苦い!クーッてなりますね、あやめさん」
「本当に。でも負ける訳にはいかないわ」
「ですよね。目指せ、完食!」
パクパクと立て続けにゴーヤを食べ、皿の上のゴーヤがなくなると、二人でやった!と喜ぶ。
「あー、苦かった。でも勝ちましたよ、私達」
「そうよね。これで心置きなくゴーヤなしチャンプルを味わえるわ」
「美味しい!ゴーヤのあとに食べると、うま味が倍増しますね」
「確かに。苦みに勝利したあとの美味しさよね」
すると久瀬くんと原口くんが、何とも微妙な表情で互いに顔を見合わせているのに気づいた。
「どうかした?二人とも」
「いえ、あの。おめでとうございます、あやめさん」
「ありがとうございます、原口くん」
原口くんに答えてから久瀬くんを見ると、にっこりと笑顔を浮かべてくれる。
私も笑顔を返してから、ふとお見合いのことを思い出した。
12時になると、パソコンを閉じた由香里ちゃんが声をかけてくる。
「うん、ちょっと待ってね」
私もパソコンをシャットダウンしてから、小さなバッグを持って立ち上がった。
二人で3階のカフェテリアに行く。
「今日の日替わりランチ、ゴーヤチャンプルかあ。あやめさん、ゴーヤ好きですか?」
「ううん、苦手なの」
「ですよねー、私も苦くて好きじゃないんです」
「でも今日は食べてみるわ」
「ええ!?どうして?」
「戦ってみたい気分なの、苦みと」
あはは!と由香里ちゃんはおかしそうに笑う。
「じゃあ私も戦います!よし、来い!ゴーヤ」
二人でゴーヤチャンプルをトレイに載せて社員証でタッチ決済を済ませると、空いている席を探す。
「んー、どこがいいかな。あ、窓際空いてますよ」
由香里ちゃんはスタスタと景色がよく見える席に近づくと、「ここ、空いてますかー?」と近くに座っている男性二人組に明るく声をかけた。
「はい、どうぞ。……って、東か」
「久瀬くん!」
私は由香里ちゃんの後ろでギクリとする。
そっと顔を覗かせると、ちょうどこちらを見た久瀬くんと目が合った。
「あやめさん、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
「ここ空いてますから、どうぞ」
「はい、失礼いたします」
大きな楕円形のテーブルで、久瀬くんは同じ営業部で一つ年上の原口くんと向かい合って座っていた。
由香里ちゃんが原口くんの隣に座り、私は久瀬くんの隣の席に着く。
「東もあやめさんも、ゴーヤ好きなんですか?」
何気なく言った久瀬くんに、由香里ちゃんが笑顔で答える。
「ううん。私もあやめさんもゴーヤ苦手なの」
「へ?じゃあ、なんで頼んでんの?」
「戦おうと思って。ね?あやめさん」
ええ、と頷くと、久瀬くんはポカンとしながら返す言葉に詰まっている。
「いざ、勝負!いただきます!」
由香里ちゃんに続いて私も「いただきます」と手を合わせた。
二人同時に、ゴーヤをパクリと口に入れる。
「んー、苦い!クーッてなりますね、あやめさん」
「本当に。でも負ける訳にはいかないわ」
「ですよね。目指せ、完食!」
パクパクと立て続けにゴーヤを食べ、皿の上のゴーヤがなくなると、二人でやった!と喜ぶ。
「あー、苦かった。でも勝ちましたよ、私達」
「そうよね。これで心置きなくゴーヤなしチャンプルを味わえるわ」
「美味しい!ゴーヤのあとに食べると、うま味が倍増しますね」
「確かに。苦みに勝利したあとの美味しさよね」
すると久瀬くんと原口くんが、何とも微妙な表情で互いに顔を見合わせているのに気づいた。
「どうかした?二人とも」
「いえ、あの。おめでとうございます、あやめさん」
「ありがとうございます、原口くん」
原口くんに答えてから久瀬くんを見ると、にっこりと笑顔を浮かべてくれる。
私も笑顔を返してから、ふとお見合いのことを思い出した。