色恋沙汰はどこまでも
 「凛子様はいちご飴よりぶどう飴派っ」
 「戻れ!!」

 私は日髙へのストレスを『戻れ』の言葉にすべて詰め込んだ。すると、パッと姿を消した日髙に確信を得た。原理はわかんないけど、おそらく感情の込め具合に左右されるっぽい。どうやら私は呪縛?の類いを扱えるようになってる……らしい。

 「そんなに僕を弄んで楽しいですか?凛子様」
 「ひっ!?」

 ヌルンッと現れた日髙に驚きつつ、なにかとペースを乱されてキャラブレしそうになる自分に嫌気が差す。日髙に振り回されてるみたいで嫌だ。

 「もうお気付きでしょう。さすがの僕でも凛子様の言霊には敵いません。契約が成立した時点で凛子様は僕に“言霊縛り”まぁ、そうですね……僕の全身を強制的に緊縛できっ」
 「きもい」
 「ハハッ」

 やっぱ言葉に感情を込めれば込めるほど、日髙は私の命令を強制的に受け入れなきゃいけなくなるってことか。まあ、封じ込めても勝手に出てこられるのが厄介だけど……ん?てことはさ、『勝手に出てくるな!』って言葉縛りできるじゃ……?

 「それはできませんよ、凛子様」
 「……なに、人の心まで勝手に読むわけ?SSSとやらは」
 「さあ?どうでしょう」

 ニコニコ笑いながら、いつの間にかぶどう飴を手にしてる日髙にもうため息しか出てこない。パッと消えてヌルッと再登場するまでのほんの少しの間のどこにぶどう飴買ってくる時間があったのよ。マジで何者?

 「はい、あーん」

 瞳をキラキラさせながら私にぶどう飴を食べさせようと接近してきた日髙の頭をベシッと叩いて、しれっとぶどう飴は受け取った。
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