色恋沙汰はどこまでも
 「いただきます」

 パクッとひと口食べると、日髙がとんでもない動きをしながら私にスマホをかざして、狂ったように連写を始める。私の瞳が異物を見る目に変わったのは言うまでもない。

 「あぁ、なんと可愛らしい。この愛らしさは1秒足りとも逃したくはありません」
 「日髙」
 「はい、なんでしょっ……んぐっ!?」

 ぶどう飴を容赦なく日髙の口へ突っ込むと、『凛子様からの大胆な間接キス……あぁ、僕はこんなにも幸せでいいのでしょうか?凛子様の一部が私の体内に入って、交じりあって、僕の一部になる』とかなんとかどうのこうの言いながら、ニマニマしてぶどう飴を私の隣で食べてる変態。周りの女は『あの人めっちゃかっこよくない!?』『モデル!?』とか騒いでるけど、見た目に騙されるなとはまさに日髙のことで、正真正銘の変態野郎でしかない。

 「で、話戻すけど。なんで『勝手に出てくるな!』は無理なわけ?」
 「僕を誰だと思ってるんですか?」
 「ただの変態」
 「ククッ、お褒めに預かり光栄です」
 「褒めてないし、頭沸いてんの?」
 「凛子様は本当に可愛らしいですね。キスしてもよろしいですか?」
 「死ぬ覚悟があるならどーぞ」
 「本望です」
 「ちょっ!?」

 不意に日髙の顔が目の前にきて、それを咄嗟に避けようとしたせいでよろけて転びそうになる始末。もちろん転ぶのを阻止したのは日髙で、助けるためといえ私に触れられたのが嬉しかったのか、ニヤけ顔が加速する変態に堪らず1発ぶん殴った。それすらも『快感です』と言わんばかりにうっとりした表情で私を見つめてくる変態に、もう感情が死んだ。
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