色恋沙汰はどこまでも
 「誰だテメェ、凛子さんに馴れ馴れしくしてんじゃねぇよ」

 あー、ダメだ。龍のあっち(柄悪)スイッチオンになってるわ。ていうか、日髙も日髙で私の腰にしれっと手添えてんじゃないわよ変態が。私は日髙の手をベシンッ!と叩いて一歩踏み出そうとした……けど、日髙の手が私の腰を掴んで離そうとしない。マジなんなの、この状況は。

 「オイ、聞こえねぇのか。凛子さんに馴れ馴れしくしてんなよ、このボケが」
 「ああ、貴方ですか。凛子様の番犬とやらは」
 「あ?」
 「僕のデータによると凛子様には番犬がいらっしゃるとのことなので」

 満面の笑みを浮かべてそう言った日髙に龍が大人しくしてるわけもなく、日髙に向かって伸ばした手を私が止めた。

 「テメェ……ってなんすか、凛子さん」
 「龍、こいつは無理」
 「あ?」
 「龍だってわかってるでしょ、無理なもんは無理」
 「俺が負けるとでも?」
 「はぁ。だいたいさ、無駄な喧嘩はしないって約束じゃん」
 「これは無駄じゃねぇ」
 「無駄」

 きっと龍だって勘で理解してるはず。日髙が普通ではないってことも、おそらく私と龍が束になって襲撃しても負けるってこと。いろんな経験をしてきたからこそ日髙の異質さに気づける。でもまあ、龍も龍でスイッチ入っちゃうとヤバいからな。日髙も無傷で……はさすがに無理だと思う。

 「凛子様は僕のフィアンセです」
 「あ"?」
 「違いますー」
 「僕と凛子様は永遠の愛を誓いました」
 「そうか、死ね」
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