(二)この世界ごと愛したい
総司令さんの軍は国王軍に捕縛。
流石に殺されることはない総司令さんも、捕縛の対象だった。
「無断での箝口令の次はユイを唆して挙兵か。また随分と勝手をしたな、シキ。」
「…あれ程戦場に行くことを渋ってた陛下は何故ここに?」
「それはお前も同じだろう。」
「…城、取られたんですけど。」
「誰のせいだと思ってる。もうお前の身勝手には付き合いきれん。処罰は覚悟しろ。」
怒り呆れるエゼルタ王。
捕縛され帰国させられる総司令さんは、ただ一点その城から目を離さない。
「…僕が…相手にしていたのは、何だ。」
「……。」
「一体どこから仕組まれたんだろう。あの手紙を貰った時から?あの魔女は数ヶ月間この時を待ってたって言うの?」
誰も言葉を返せない程、目を輝かせながら総司令さんは私を思い浮かべる。
「あー…ヤバい。興奮止まんない。」
「シキ。」
「陛下ちょっと待って。僕本当にヤバいかも。」
「…お前は、道を踏み外し負けたのだ。」
生まれて初めての、敗北の味。
総司令さんが夢のような未知なるその味に酔いしれているのを、エゼルタ王が現実として突き付ける。
「僕が…負けたの、か。」
「お前の人生に敗北が刻まれる日が来るとはな。長生きはするもんだ。」
「陛下お爺ちゃんみたい。ちょっと僕本当に魔女に会いたいんだけど!?陛下どうにかして!?」
「お前がいつまでも子供なんだ。どうもこうも、こうなっては詫びの一つでもしなければ気が治らんわ。」
二人だけの空間では、仲の良い雰囲気溢れる王と総司令。
関係性は違えども、ハルと私に近いものを感じる。
「ゴウの至宝を招待しよう。我がエゼルタへ。」