(二)この世界ごと愛したい
手は出さない。姿も見せない。
だからせめて今ここでは、しっかり見届ける責任くらいは全うしたい。
「…ごめんね。」
仲の良い兵同士も居ただろう。もっと最悪は、家族同士も居たのかもしれない。
同士討ちなんて、図ってごめん。
でも、エゼルタの歪みは正しに行くと。本来の在るべき様へ戻すと約束しよう。
「総司令さんに、良いお灸を据えられたかな。」
互いに負け無しの戦歴を持つ、今回の戦。
エゼルタ国王軍をここへ呼び寄せられた時点で、勝敗は決していた。
…私の勝ちでいいよね?
「だから過去の栄光に胡座かかないでって、伝言残したのに。」
総司令さんの軍は、この城の兵諸共減っていく。
国王軍も決死の抵抗を受け無傷ではない。
それぞれ開戦前から様変わりして、最終的には約三千人程の国王軍だけが戦力として残存。
この場にその第一将が率いるパルテノン軍一万が現れ、エゼルタは城内の兵も使えず敗走を余儀なくされた。
そんな感じで戦は終わる。
全て読み通り。備えた通りの結果だった。
「はー…。次は交渉、だな。」
何も犠牲を払わず、欲しいものを得られる人なんてこの世にはいないから。
ただより怖いものはない。
この城を盾に、カイへ新たな交渉をしようと企んでいる私。だけど今はとにかく、城を見事無血で取ったパルテノン軍を祝うとしよう。
この国の正義が、私を惹き繋いだ勝利だ。