(二)この世界ごと愛したい

「え、魔女が殺せって言ったら僕死刑じゃん。」


「…仕方あるまい。」


「ちょっとー。その時は守ってよー。」


「シキ、俺は本気だ。お前はそれだけのことをしたんだ。」



これまでも、今回の戦のことも。


私への遺恨も含めて、それを敢えて分からせようと今回国王軍を討伐軍と化して進軍したエゼルタ王は流石である。




「ゴウの至宝に手を掛けるとは、そう言うことだ。」


「…至宝ね。確かに僕を相手にここまでのことしたんだから、至宝には違いないね。だけど僕は諦めないよ。絶対に手に入れたい。」



その目に、全盛期の野心溢れる目に等しい。


狙った獲物は逃さない欲に塗れている。





「…あれは、ランではないからな。」


「……。」


「その娘だ。シキ、見誤るなよ。」


「…分かってるよ。僕のランちゃんはこんな非道な手は打てない。心の綺麗な人だからね。」


「お前のじゃないだろ。」



ママのことが好きだった総司令さん。


非道なことをする私とは違うとハッキリ言った。







「ランちゃんの娘…ってやっぱ絶対綺麗だよね。」


「良い加減にお前は少し落ち着け。」




そうしてエゼルタへの帰還を果たした二人。


王はまた自室に篭り、総司令さんは自宅で謹慎処分。



エゼルタでのこの内戦は、パルテノン軍に敗北したと言うことで終わった。結果として内戦のことを世界に伏せることでは好転。


箝口令を出したことも功を奏して、総司令さんの人生に敗北の文字が刻まれたことを知る者はいない。







「一体どこまで…仕組まれてたのか。気になるなー。」


「……。」


「あ、シオン。部屋から出られたんだね。久しぶり。」



自宅謹慎となった総司令は、ただぼんやりと私との戦に考えを巡らせていた。


そこへ、箝口令が解かれ部屋から出てきたシオンが通り掛かる。