(二)この世界ごと愛したい
思い出して、その身を小さく強張らせる。
一体いつから仕組んでいたのかと、今度はシオンが父と同じことを考えることになった。
「ねえ、シオン。僕は諦めきれないんだ。」
「……。」
「あの子をもう逃したくない。何が目的かは知らないけど、あの子は必ずこの王都に来る。その機を使って、絶対に捕らえたい。」
「……。」
その目的が、シオンの読み通りならば。
それは弟のトキを慮った、偉大な優しい想い。
「陛下は、シオンが捕えるに値するって判断したなら捕らえても良いって言ってくれたんだけど。」
「何で俺が。」
「だからその時は、よろしく頼むよ。」
「断る。」
そんな面倒事はごめんだと即答。
「…あれは、捨て置いちゃいけない。神の手に渡せないし、またアレンデールの総取りなんて…絶対にさせない。」
「…?」
「もしかしたら、この陛下の招待さえも謀ったのかもしれない。もう侮る相手じゃないのは分かった。この僕をこんな風にしちゃった責任は取って貰うよ。どんな手を使っても、ね。」
「…はぁ。」
溜め息も吐きたくなるだろう。
その目は、獲物を狙う狼の目のように鋭い。そして無意識に漏れるこの威圧感は流石のもの。
本気で嫌になったシオンはその場を離れ、また自室に篭る。
「…また厄介な事になったな。」
そして、まさかこんな方法で総司令さんを討ち負かすとは想像しなかったシオンも。
ここは親子なので、密かに感情が昂る。
「…行くか。」
天使の元へ。
箝口令が解かれた今、会えない理由は何もないと。
シオンはすぐに動き出した。