(二)この世界ごと愛したい
私は珍しく早めに目覚める。
昨夜飲み過ぎたせいで、不快感の残る胃と、痛む頭のせいだった。
「…ん?」
目を開いたら、おーちゃんの寝顔で視界は埋まる。
最高に可愛いものを目覚め一発目に拝めるとは、何て良い日なんだ。
しかし、自分が抱えられたままなのに気付き、これではおーちゃんが休まらないので。
私はそっと腕の中から脱出。
「ふー…。」
良い朝ですね。
兵達も宴の後片付けと、今日からの城の守備に取り掛かろうと動き出している。
「あ、嬢ちゃん起きたか!?」
「おはよう、ございます?」
「オウスケさんは!?」
「寝てたからそのままにしてるよ。」
一人の兵が私を見つけ走って来た。
「昨日はオウスケさんとの時間を邪魔して悪かったなー!」
「はい?」
「オウスケさんは人気者なんで、これからも中々大変だろうが大目に見てくれよ!」
「あ、いや…はい?」
良いことじゃないか。
みんなに好かれる人気者なんて、なろうと思ってなれるものでもないだろう。私は何を大目に見ろと言われているのかが分からない。
「けど戦場にまで着いて来るなんて、嬢ちゃんも肝座ってるな!」
「…あー、そうですね。」
「なのにオウスケさんを振るって、嬢ちゃん他に好きな男でもいんのか?」
「はい?」
昨日は一体この人達に何を喋ったんだ。
すやすや寝てるオウスケさん。
「好きな…人は…。」
「昨日嬢ちゃんが寝た後も、オウスケさん肌身離さずずっと抱えてたよ。もうこっちまで幸せになる溺愛っぷりで、嬢ちゃん他に移動させようとした奴なんか触るなって怒られてたぜ。」