(二)この世界ごと愛したい
そんなに時間を空けず起きてしまったおーちゃん。
聞こえていたのか聞こえていなかったのかは定かではないが、気怠そうに頭を押さえて私の側にやって来る。
「…おはよ?」
「おはよーさん。」
挨拶をしてすぐに、おーちゃんが私と話していた兵を睨む。
「お嬢ちょっと外してくれへん?」
「え…?」
私が外すのか。
一体どこから聞こえていたんだ。そしてこの人を怒るのはやめてあげて欲しい。
「…うん。お馬さんとこで待ってる。」
「了解。」
置いて行かないでと、兵隊さんの心の悲鳴が聞こえてはいるが。
私も巻き込まれるのは嫌なんだ。
…ごめん!!!
「ほんで、お前何言うてたん?」
「…すみませんでした。」
「俺のために話したんやったら大迷惑やで。お嬢がほんまにおらんくなったら許さへん。」
「ま、まさか。あんなのその場の勢い…では?」
私の誓いをその場の勢いと捉えていたらしい。
「あのお嬢は本気でやりよるねん。」
「…す、すみません。」
「…悪気がないんは分かっとる。何せお嬢が生きたいと思い始めたんここ最近らしいんよ。死ぬことに何の躊躇いもない。」
「そんな…。」
自分の犠牲も厭わずに。
ただ己の道を切り拓くことしか考えない。そんな私の性格を、おーちゃんは理解し始めていた。
「俺が心配なんは嬉しいけど、俺はお嬢が元気に生きててくれることに心血注ぐわ。」
「……。」
「やから他の男のことなんか聞くな!?俺はまたフラれたんか!?」
「あ、ですね。大好きな人がいるって言ってましたね。」
「相手は誰か分かっとるけど腹立つねん!!!」
本来言いたかったのはこっちかと思うほど、声を大にして怒ってこの場を離れたおーちゃん。
最後に城門前の兵に後はよろしくと伝えてから、私を追い掛ける。