(二)この世界ごと愛したい
「シオンは手出し無用なので。お城では絶対私に関わらないでね。」
「…何で。」
「その方がお互いのためだよ。話さない、目も合わせない、極力私を避けまくって欲しい。」
「……。」
「「…。(白狼、可哀想。)」」
哀愁漂うシオンと、そんなシオンを憐れむカイとおーちゃん。
おーちゃん今日は本当に大人しいな。
「他に、私に何か用ある?」
「……。」
「私立て込んでて行くとこもあるんだけど、もういい?」
「……。」
「…はぁ。」
どうしてまた、そんな寂しそうにするんだ。
箝口令のせいで思うように動けなくて、ここにも来られなくて。せめて何か言ってくれれば、出来る範囲で対応するのに。
「ん。」
「…?」
「食べる?」
私はカイがコーヒーの付け合わせで置いてくれたお菓子を、一つシオンに差し出す。
「……。」
「シオンにとって、私って未知なるものなんだろうね。」
「何の話。」
「私、思い通りにいかないでしょ?」
己の軍を、まるで自分の手足のように操るシオン。敵も味方も思いのままに動かすことが出来る。そんな統率力を持ってしまったからこそ。
私の存在は本当に厄介なことだろう。
「ですね。」
「私が不安になってるから余計だね。心配掛けてごめん。」
「…そこはハルの言う通りだと思いました。生半可な覚悟なら、行かない方が良い。」
「うん、ごめん。もう悩むの止める。」
私は勝ちます。負けません。
数年越しに、この人を自由に還さなきゃいけない。
「総司令さんとの、最後の決戦になるだろうね。」
「…ユイ姫は?」
「まずは周りから削ぐ。総司令さんから潰した方がユイ姫さん心折れるでしょ。」
「性格悪。」
偉そうにお菓子食べてるシオンにだけは言われたくないよ!?
「勝てない分野で勝負したって仕方ないもんね!ここはやっぱり我流で挑みます!」
「…我流?」
「本物のお姫様には絶対に敵わないけど、戦国の姫としての格の違いくらい魅せなきゃね!」
「戦国の、姫…。」
「ハルパワー貰って応えられない私でいるのも嫌だし!絶対勝つから!もう少し待っててね!」
「…待つって?」