(二)この世界ごと愛したい
シオンは身に覚えがないかの様子。
忘れてしまったのか。
「勝利の美酒は一緒に飲もうって言ったじゃん。」
「…そうでしたね。」
「シオンがちゃんと言い付け守って不動を貫いてくれたら、その時に諸々お礼もするね。」
「そこは俺の勝手です。」
それはそうかもしれないけど。
シオンに動かれると、私も動きを変えなきゃいけなくなるんだよな。
…合わせられるだろうか。
「当日はるうがいるから、私の守りに不足はないよ。」
「…ハルじゃなくて?」
「どっちにしようか悩んだんだけどねー。色々あって今回はるうに頼んだの。」
「…ハルよりマシか。」
ハルを擁護したいが、ここもシオンと同意見。
ハルは例え相手が王族であっても、私の危機には剣を振り抜けてしまう。戦争が始まってしまう。
その分るうはちゃんと弁えてるので、安心感が違うんです。
「ハルとるうは良し悪しあるけど、今回は若干るうの方が適任だよねー。」
「作戦先に聞いとくのは無理ですか?」
「…無理と言うか嫌、かも。戦じゃないからほぼ先が見えないし、将軍相手じゃないから出方も分かんない。」
それに結局のところ、全てエゼルタ王次第。
私を守るために今回国王軍を率いて、総司令さんを止めてくれた優しいあの人が。
…私を許せるかどうかに掛かっている。
「いつですか?」
「あ、招待状見てなかった。でも日時はたぶん私に任せてもらえると思……っ!?」
私はハルから受け取った招待状に目を通して、とある一文に驚いた。
『此度、我が国が犯した罪との相殺が可能であるならば、城へ参られよ。』
罪を罪で相殺…か。
やっぱり、あの人は私の罪を知っている。それを知っておきながら、許そうと考えてくれている。