(二)この世界ごと愛したい
私が邪魔したディオンとの戦では、アキトは温存だったし。もし、それまでも今も絶え間なく腕を磨いていたとしたら…。
「私は、アキトがあっさり勝つと思うよ。」
「貴女が鍛えたから?」
「私はきっかけを作ってあげただけ。この先のアキトが進む道は旭日昇天。向かうところ敵無しの無双状態だろうからね。」
それを、見てみたいと思った。
そんな未来が、確かに見えたから。
だから私は、アキトの勝利を信じてる。
「そう言えば鬼人が、天帝が百戦勝ったら戦するって言うてたで。」
「ハルはアキトが好きなんだねー。」
「何かお嬢が天帝の未来を見たからどうとかって言うてたけど。」
「うわ、筒抜けすぎてムカつく。」
カイがハルの胸の内を教えてくれた。
私のことなど手に取るように分かっているハルが、やっぱり好きだけど。分かりすぎててムカつく。
こんなに分かってるくせに、欲しい言葉だけはくれないなんて。ハルは意地悪だ。
「アキトの未来って?」
「えーだってアキトって見てて楽しいもん。わくわくするじゃん。」
「楽しい?」
「シオンにとっての私と同じ。未知なるものって、どうしても気になる。」
上手く説明出来たと思ったんだけども、目の前のシオンは再び怒りの色を見せる。
「…今日のあんた特別ムカつく。」
「怒らないでください。なんかごめんなさい。」