(二)この世界ごと愛したい
そんなあまりにも優しい大きな器は、私の小さな器では溢れてしまう。
その優しさに、苦しくなった。
「…お嬢…?どないしたんっ!?」
「自分が馬鹿みたいで…。悲しいです。」
私の目から涙が一滴流れるのを見て、おーちゃんが驚いて心配する。
「あー…日時はやっぱり私に任せるって。だから約一ヶ月後くらいだと思ってて。」
「…陛下、何書いたんですか。」
「えーちょっと優しい気遣いをいただいてね。前も思ったけど、この王様ほんと良い人すぎる。」
デリカシー皆無のシオンが、私の手から招待状を抜き取り勝手に目を通す。
普通読むか?人様宛のお手紙を?
「…泣く要素どこ?」
「うるさい。もう泣いてない。」
「…未知過ぎる。」
「あ、総司令さんってシオンの師匠なんだよね?もし和解出来たら私も色々教えて欲しいんだけど口聞いてくれない?」
せっかくエゼルタに行くなら、せっかくだから教えを乞いたい。そしてせっかくなら私も弟子になりたい。
「あとシオンのご実家にも行って探検したい!ご家族にもお願いしてくれる?」
「「「……。」」」
この場で、それが同一人物だと知らないのは私だけ。
シオンのこの隠し事は、エゼルタ城に行って割とすぐに明かされることになる。
「…無理です。」
「何で無理なの?自分で頼んでもいい?」
「ダメです。」
「どっちかだけなら?」
「嫌です。」
「…けち。」
もうシオンには頼まない。トキに頼もう。
「トキは戦で忙しいだろうから、エゼルタには来られないのかなー。」
「…アキト次第でしょ。」
「アキトがさっさと勝てば間に合うのかー。」
「難しいでしょうけど。」
おや、ここで初めてシオンと意見が割れた。
大将首がどうなるかは置いといて、私はアキトがそんなに時間を要するとは思わない。