(二)この世界ごと愛したい
「しない。私出掛ける。カイ、帰って来たら話あるから待っててね。」
「分かった…って、この二人このまま置いて行くん!?」
「…そんなにキスしたいなら、二人でやってたら?」
適当なことを言い残して、私は振り返りもせずにお店を出ました。
私は面倒な問答が嫌いです。実のない話も時間の無駄なので嫌いです。今のは正にそれだ。
ハルは私のことを理解しているが故に、私の嫌がることも熟知している。
「…キスって、あんなに怒られるのか。」
おーちゃんはね。
私にプロポーズしてくれたくらいだから嫌な気持ちになるのは、経験値から多少理解出来ないこともない。
でもシオンも…似たような気持ちなのか。
…恋愛ってこう言うのも面倒だ。
怒るくらいなら、初めから好きになんてならなければ楽なのに。
「あと二箇所。今なら没頭出来そう。」
恒例になりつつある作業も、今日で終わるな。
今ならこのモヤモヤする気持ちを吐き出すように打ち込めばすぐ終わりそうだ。
ハルの気持ちは知ってるよ。
ハルが私の行動を制限しないのは、罪悪感からだって。
死にたい私を生かし続けている罪の意識から、何も言わないことを知っている。
だから、簡単に怒れば良いなんて。
ハルにそんなことは言わないであげて欲しいと、思ったからこそ私は憤ってしまった。