(二)この世界ごと愛したい



無事に作業完了!ノルマ達成!


この作業が終われば、私は一ヶ月後のエゼルタ遠征のために己の鍛錬あるのみ!



剣の修行と、女を磨く修行だ!!!




「ただいまー!」


「お、おかえり。お嬢。」



店内には、カイが一人。


え、めちゃくちゃラッキーなんですけど。




「またかいな!?」


「泥んこです。」


「最近ほんまになんなん!?」


「もうしません。」



もう汚れて帰って来ることはないから安心してねと、カイに伝えてから。


いつものようにシャワーを浴びるために私は上の階へ向かう。



適当にバスローブだけ羽織って下に戻る。





「カイー。」


「っ!お嬢またそんな格好したらあかん!」


「カイとお話したらすぐ上がって寝るからー。」


「…いや、オウスケもう帰って来るし。白狼もたぶんまだこの国におるで。」


「えーめんどくさ。」


「こらこら、お嬢もそう言わんと。」



カイは私にそう言いながらも、ご飯と飲み物を与える。


ここは有り難く、手を合わせていただきますを伝える。そして少しずつ食べながら話を進める。




「…おーちゃんに戦のこと聞いたんだよね?」


「聞いた。気使わせて堪忍な。」


「私が独断でやったことだし、カイが気に病まないならそれでいいの。」


「ほんで?話って?」



この先の、ビジネスの話だ。




「…カイと取引がしたい。」


「取引?」


「今までカイが頑張って築いてきたお客様との信頼関係と、今回落とした城。交換して欲しいの。」


「は?」


「完全作り物の、嘘の情報を全国に流して欲しい。そしたらお城は今のままパルテノンの好きにしていいよ。」


「嘘の情報…を全国にってなったら、確かに俺の商売に穴開くわな。離れる顧客も出て来るし。敢えて簡単に城を落とさせた裏にこんなんが待ってるとはなー。」




世の中ただより怖いものはない。


騙し討ちのようなことをして申し訳ないとは思うけど、それでも私の願いを今叶えられるのはカイしかいない。





「ちゃんとお願いして、頭を下げれば…カイは優しいから私の言うこと聞いてくれる気もしたの。」


「ほんまやで。俺は今そっちの方がショックやねん。」


「だけど、私が嫌なの。何かあった時に私の行動でカイが苦しい思いするのは嫌。だから、カイに選択して欲しい。」


「…俺が断ったらあの城どうするん?」



そっちの答えはないと思っていたから考えてもいなかった。けど、断られたら…そうだな。




「今更アレンデールが取るわけにもいかないし、穏便に燃やすかな。」


「どこが穏便やねん。怖いわ。」





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