(二)この世界ごと愛したい
「…結局は、そうなるんだ。」
「…?」
「あの姫をどれだけ憎もうとも、どうせ殺せはしない。」
「…憎い?」
エゼルタ王が自嘲する。
シオンには、その理由が分からない。
この国で、私が犯した罪に気付いたのはこのエゼルタ王と総司令さんの二人だけ。
「あの姫を前にして、俺が血迷って剣を抜くことがあればお前が止めてくれ。」
「……。」
「本当は国を挙げて守りたいがな。」
「…意味が分かりません。」
憎いと言った。
殺してしまうかもしれないと言った。
その口で、守りたいと言う。
「俺はあの姫を結局許すしかないのだろうな。」
「…では止める必要はないですね。」
「万が一もある。一応心に置いておけ。」
「分かりました。」
これで、私はこの人に殺されることは実質無くなったと言える。
万が一のために添えるのがシオンならば、私を死なせることなどまずしない。それが公然に許されたのだから余計に。
「後の憂いはやはりシキだな。」
「……。」
「…あの姫は、この国で何を思うだろうか。」
「…道のない所に道を作る事だけを考えてるんで、それ以外は頭に無いはずです。」
そう言ったシオンの顔を見て、エゼルタ王はまた笑う。
そんなシオンは礼を通して王の部屋を退室。
「シオンもあんな顔をするようになったか。」
それが色恋に纏わるかは置いておいて。
「流れる血とは恐ろしいものだな。」
少なからず、女性に対して冷酷な対応をするシオンが、私に対しては少し違うことを感じ取ったエゼルタ王。
それを、流れる血の所為だと言う。
「…やはり親子か。」